「介護ベッドって、普通のベッドと何が違うの?」
「電動なら何でも便利そう。でも、種類が多すぎて選べない!」
そんな声を耳にします。たしかに、介護ベッドは見た目も機能もいろいろ。パンフレットを並べた瞬間、「ベッド選びの前に、私が横になりたい……」となる方もいるかもしれません(笑)。
私は福祉用具専門相談員として、利用者さんの身体状況や住まい、介助するご家族の負担を考えながら福祉用具の選定に携わってきました。
今回は介護ベッドの機能、介護保険でのレンタル条件、費用の考え方、失敗しない7つのポイントを、専門相談員の視点からやさしく解説します。
先に結論:介護ベッド選びで大切なのは「高機能かどうか」より、利用者さんが安全に起き上がり、立ち上がれ、介助する人も無理なく使えるかです。
介護ベッドとは?普通のベッドとの違い
介護ベッドは、背もたれや床面の高さなどを調整して、起き上がり・立ち上がり・移乗・介助を助けるベッドです。介護保険の制度上は、一定の機能を満たすものが「特殊寝台」として福祉用具貸与の対象になります。
「寝られれば何でも同じでしょ?」と思いがちですが、起き上がるときに上半身を支えられるか、足が床にしっかり着く高さにできるかは、毎日の暮らしに大きく影響します。
介護ベッドでできる主なこと
- 背上げ:背もたれを起こし、食事や起き上がりの動作を助ける。
- 高さ調整:立ち上がるときや介助時に、床面の高さを調整する。
- 膝上げ・脚部調整:姿勢を整えるために使う機能。搭載内容は機種によって異なる。
- 付属品との組み合わせ:マットレスやサイドレール、介助バーなどを、必要性と安全性を確認して選ぶ。
なお、背上げによって身体がずり下がることもあるため、角度の付け方や姿勢の整え方は利用者さんに合わせて調整します。
1モーター・2モーター・3モーター、どれを選ぶ?
介護ベッドを探すと「○モーター」という言葉が出てきます。数字が大きいほど良い、というわけではありません。
1モータータイプ:必要な動作を絞ってサポート
機能を絞ったタイプです。ただし、どの部分を動かせるかは製品によって異なります。「1モーター=背上げだけ」と決めつけず、仕様を確認しましょう。
2モータータイプ:起き上がりや立ち上がりを支えたい方に
複数の調整機能を組み合わせて使えるタイプ。背上げと高さ調整の組み合わせなどがありますが、操作できる内容は機種ごとに違います。
3モータータイプ:姿勢調整の選択肢を広げたい方に
背上げ・高さ調整・膝上げなどを、それぞれ調整できる製品があります。ベッド上で過ごす時間が長い方や、細かな姿勢調整が必要な方では検討する価値があります。
専門相談員のひとこと:「3モーターだから安心!」ではありません。必要な機能が使いやすく、ご本人に合っているかが大切です。使わない機能が増えても、リモコンのボタンだけが増えるかもしれません(笑)。
介護ベッド選びで失敗しない7つのポイント
1.起き上がりの状態を確認する
寝返りはできるか、横向きになれるか、背上げがあれば起き上がれるか。「できること」と「手助けが必要なこと」を整理してから選びます。
2.立ち上がるときの高さを合わせる
高すぎると足が床に届きにくく、低すぎると立ち上がりにくい場合があります。ベッドの端に座ったときの足の位置を実際に確認しましょう。足元の履物やマットレスの厚みも関係します。
3.介助する人の負担も考える
おむつ交換や更衣介助で前かがみが続くと、腰への負担が増えます。高さ調整や周囲の作業スペースを確認して、ご本人にも介助者にも無理のない環境を目指します。
4.マットレスを「寝心地だけ」で決めない
柔らかければ快適とは限りません。沈み込みが大きいと、寝返りや立ち上がりが難しくなることもあります。反対に、体圧分散が重要な方には別の視点が必要です。床ずれのリスクがある場合は、医療・介護職とも相談しましょう。
5.ベッド柵や介助バーの安全性を確認する
サイドレールと介助バーは役割が異なります。特に、柵とマットレス・ベッド本体のすき間への挟み込みには注意が必要です。適合する組み合わせを福祉用具専門相談員に確認しましょう。
6.部屋の広さと動線を確認する
ベッドを置けても、車いすが横付けできない、介助者が回り込めない、扉が開かない……では困ります。搬入経路、コンセント、家具、トイレまでの移動経路もチェックします。
7.実際に試してから決める
パンフレット上の数値だけではわからないことがあります。ベッドの高さ、リモコン操作、起き上がり動作、立ち上がりや移乗のしやすさを、できる範囲で実際に試してください。身体状況が変わったら再評価することも大切です。
介護保険で介護ベッドをレンタルできる条件
介護保険の対象となる介護ベッドは、制度上の「特殊寝台」です。対象となる付属品も、必要性と条件に応じてレンタルできます。
原則は要介護2以上
特殊寝台とその付属品は、原則として要介護2~5の方が介護保険による貸与の対象です。要支援1・2、要介護1の方は原則対象外となります。
要介護1以下でも例外的に利用できる場合がある
ただし、身体の状態などにより、認定調査の結果に基づく判断や、医師の所見・ケアマネジメントを踏まえた市区町村の確認などによって、例外的に保険給付が認められる場合があります。
「要介護1だから絶対に無理」と自己判断せず、担当ケアマネジャーや福祉用具貸与事業所へ相談してください。認定前や保険対象外の場合は、自費レンタルという選択肢もあります。
介護ベッドのレンタル費用はいくら?
レンタル料金は、製品・付属品・事業所・地域などによって異なります。そのため、「介護ベッドなら月○○円」と一律には言えません。
介護保険が使える場合は原則1~3割負担
介護保険の給付対象として利用する場合、利用者負担は原則1割、所得に応じて2割または3割です。例えば月額貸与料金の合計が10,000円なら、利用者負担の目安は1割の方で1,000円、2割の方で2,000円、3割の方で3,000円です。
これは計算例であり、実際のレンタル料金ではありません。介護保険の区分支給限度基準額や保険給付の条件なども確認が必要です。
「ベッド本体だけの価格」では比較しない
見積もりでは、本体に加えてマットレス・サイドレール・介助バーなど必要な付属品を含めた月額合計を確認しましょう。搬入・設置や故障時の対応、交換の相談方法も聞いておくと安心です。
また、厚生労働省は商品ごとの全国平均貸与価格や貸与価格の上限を公表しています。最新情報は厚生労働省の案内で確認できます。
ベッド本体と一緒に考えたい付属品
マットレス
寝返りや起き上がりのしやすさ、体圧分散の必要性を考えて選びます。「厚ければよい」「柔らかければよい」とは限りません。
サイドレール(ベッド柵)
主に寝具のずれ落ちなどを防ぐ目的で使われます。転落を完全に防ぐ道具ではありません。必要以上に囲む使い方は避け、利用者さんの状態と事故リスクに応じて判断します。
介助バー・移乗に役立つ用具
起き上がりや立ち上がりの支えとして使うものがあります。握る位置や取り付け方が合わないと危険なため、設置後に動作を確認しましょう。
なお、付属品の種類や介護保険の対象可否は製品・組み合わせ・利用条件によって異なります。
要注意!介護ベッドの事故を防ぐために
ここは少し真面目なお話です。介護ベッドは便利な反面、サイドレールや介助バーのすき間に首・手足などが挟まれる重大事故が報告されています。
- ベッド・マットレス・柵の組み合わせが適切か確認する。
- 柵とベッド本体、マットレス、頭側・足側のボードとのすき間を確認する。
- 電動で動かす前に、利用者さんや周囲の人の手足の位置を確かめる。
- キャスター固定、コード、床まわりの障害物、誤操作にも注意する。
- 使用中に不安があれば、自己流で改造せず、事業所やメーカーへ相談する。
「柵を付けたから安心!」で終わらせず、使い方まで確認することが大切です。
参考:消費者庁「介護ベッドと柵や手すりとの間に首などが挟まれる事故に注意」
相談からレンタル開始までの流れ
- 困っている動作を整理:起き上がり、立ち上がり、寝返り、移乗など。
- ケアマネジャー・福祉用具専門相談員へ相談:介護保険の対象条件も確認する。
- 自宅の環境を確認:部屋の広さ、搬入経路、介助スペースを見る。
- 商品の提案・試用と見積もり:機能・付属品・月額料金を比較する。
- 搬入・設置・操作説明:本人と家族が使い方を確認する。
- 利用開始後の点検・見直し:身体状況や介護方法が変わったら相談する。
ちなみに、一度選んだら一生同じベッドを使わなければならないわけではありません。状態や生活環境の変化に応じて、適切に見直していくこともレンタルの利点です。
よくある質問
Q.まだ要介護認定を受けていません。すぐに使えますか?
自費レンタルなどで対応できる場合があります。認定申請中の扱いも含め、担当ケアマネジャーや福祉用具貸与事業所、自治体へ事前に確認しましょう。
Q.購入とレンタル、どちらがおすすめですか?
身体状況が変わる可能性や、点検・交換・撤去のしやすさを考えると、レンタルが向いていることがあります。一方、自費利用や購入が合うケースもあるため、利用期間と総費用を比べて判断しましょう。なお、特殊寝台本体は通常、介護保険の特定福祉用具販売の対象ではありません。
Q.どのメーカーが一番いいですか?
メーカー名だけで決めず、必要な動作、操作のしやすさ、設置環境、マットレスとの相性、アフターサポートで比較するのがおすすめです。
まとめ|介護ベッド選びは「本人の動き」と「介助のしやすさ」が決め手
介護ベッドは、単に寝るための家具ではありません。起き上がりや立ち上がりを助け、介助する人の負担を減らすための大切な福祉用具です。
選ぶときは、必要な機能・高さ・マットレス・付属品・部屋の動線・費用・安全性の7つを確認しましょう。
「とりあえず一番高機能なものを!」ではなく、その方の暮らしにちょうどいい一台を見つけること。これが、福祉用具専門相談員として大切にしたい考え方です。
福祉用具のことをもっと知りたい方は、「福祉用具の基礎と実務」の記事一覧もご覧ください。
※この記事は2026年10月時点で確認できる公的情報をもとにした一般的な解説です。個別の利用可否や料金は、保険者・担当ケアマネジャー・福祉用具貸与事業所にご確認ください。

